不動産投資において、投資判断をするために重要な指標は「利回り」です。
投資の収益性を表す指標で、年間を通じて得られる収益の割合を示します。利回りは不動産だけでなく、株式や債券など、さまざまな投資商品に対して使われるものであり、何の投資をするにおいても重要な指標となってくるものです。
その中でも不動産投資の利回りはわかりやすいです。
例えば、1年間で100万円の家賃収入がある不動産物件を1,000万円で購入した場合は、利回り「10%」となります。
上記は、年間家賃収入を購入価格(総投資額)で割ったものであり、「表面利回り」と呼ばれます。
対して、表面利回りから管理費や修繕積立金、税金などの年間経費を収入から差し引いたものが「実質利回り」です。
投資判断する上でどちらが重要か、言うまでもなく、断然「実質利回り」となります。
実質利回りが3.3%の物件。
これは当ブログ管理人である私の所有物件の数字ですが、この利回りは良いのでしょうか、悪いのでしょうか。
本記事では、実質利回り3.3%の物件を購入したらどうなってしまうのか、私の物件の具体的な数字を用いて考えていきます。
利回りは高ければ良いというわけではない
まず大前提として、利回りは単純に高ければ良いというわけではありません。
利回りは「年間利益 ÷ 購入価格」で計算するものであり、購入価格、つまり物件価格を安くすれば、利回りは必然的に高くなります。
そして、物件価格が安いということは、安く売られるだけの理由があるということです。
なぜなら、その物件のリスクが高いから安い値段で売りに出すわけで、値段が安ければ、当然、利回りが良くなるわけです。
逆に、優良物件であれば、高く売り出すので、利回りが悪くなります。
それはつまり、利回りの高さはリスクの高さと比例するということです。
地方都市には、高利回りのワンルーム・1Kマンションなどが多数存在しますが、それはリスクと隣り合わせとなります。「リターンとリスクはセットとなる」、投資の基本的な考え方ですが、不動産投資失敗例の多くは、高リターンに目を奪われ、リスクを見誤ってしまった点にあると言えます。
管理人所有物件情報
実質利回り3.3%の物件は以下になります。
所在 | 神奈川県横浜市 |
建築時期 | 2021年(令和3年) |
間取り | 1K |
建物構造 | RC(鉄筋コンクリート) |
アクセス | 駅から5分圏内 |
購入金額 | 約2,400万円 |
私の現在の所有物件は東京23区ではなく、横浜です。
横浜は、自然が豊かで、美しい景観を楽しむことができる都市です。横浜みなとみらい21や山下公園、横浜ベイブリッジなど、多くの観光スポットがあり、さらには横浜スタジアムや横浜国際総合競技場など、スポーツ施設が充実しており、さまざまなスポーツイベントが開催されます。
東京から近く、通勤圏内にあるため、東京で働く方々が多く住んでいます。(横浜は独自の歴史、文化、経済活動を持つ大都市であり、東京のサテライトタウンやベッドタウンと表現してしまうと怒られるかもしれませんが・・・。)
人口が多い都市ランキングでは東京都を除くと横浜は1位となっており、横浜が過疎化する可能性も低いでしょう。(出典:国立社会保障・人口問題研究所|人口統計資料集(2023))
新築物件で、耐用年数はまるまる残っています。オートロック、モニター付きインターホン、防犯カメラ等、防犯設備やセキュリティもきちんと整っており、光回線対応、ゴミ出し24時間OKと設備面でも問題なく、なにより徒歩10分圏内に駅が3つあり、交通の面でもとても便利な立地であったため、ここに決めました。
月々のキャッシュフロー
現状の収支は以下の通りです。
家賃収入 | 75,000円 |
毎月返済額 | 71,500円 |
管理費 | 7,200円 |
修繕積立金 | 1,800円 |
月次収支 | マイナス5,500円 |
この物件はサブリースを付けています。というのも新築物件であったということで通常は家賃の90%のところを95%保証としてくれるということだったので付けました。
新築であろうが、横浜であろうが、ワンルームや1Kの間取りの賃貸は空室になる期間が必然的に発生します。その都度、原状回復費用も発生してしまいます。
契約は3年で、空室時の家賃保証だけでなく設備トラブルの修理費用や原状回復費用も負担してくれるということで、悪くない条件でしたので付けました。
ただ、そのせいもあってはじめから月々のキャッシュフローがマイナスとなってしまっています。
管理人所有物件から利回りの妥当性を考える
不動産投資は、家賃収入から経費と借入返済を差し引き、残ったキャッシュフローが利益となります。
それがマイナスになってしまっているので、上記考え方であれば投資として成立していません。
しかし、このまま35年間ローンを支払い続け、完済すればその後の家賃収入は経費除いて収益となります。
その状態を目指すのであれば、毎月の手出し5,500円ぐらいは資産構築のための準備金と捉えれば良い。ということが言えれば良いのですが、そうはいきません。
月々5,500円だと年間66,000円の手出しです。これを35年から払い続ければ230万円になります。しかし、新築時の家賃がそのままずっと続くわけがなく、途中で下がると考えなければなりません。さらには、修繕積立金も今はかなり安いですが、このままというわけにはいかないでしょう。他の物件では、築10年後ぐらいに1,800円→9,000円に上がった前例もあります。
もっと言えば、サブリースによる家賃、設備保証がいつまでも続くとは限りません。少なくとも年々条件は悪くなっていくでしょう。サブリースを解約したら設備が故障した際の交換費用や退去が発生する度に原状回復費用が発生してきます。
お金は臨時収入より臨時出費の方が多いというのが世の常です。そうしたものが積み上がって、すべてひっくるめて計算すると現状の手出しから数倍高くなっていると考えなければなりません。
そして35年が過ぎたとき、その物件にどれくらいの収益性があるかが重要です。
新築なので35年経ってもまだ築35年ということで、まったく収益性がなくなっているというわけではないでしょうが、これまで負担した分をペイできるまで時間が相当かかるのは明白です。
例えば、管理費・修繕積立金などもろもろの費用を引いて月5万円の収益となったとして、年間60万、それが10年続いて600万円です。
上記はかなり楽観的な計算であり、その期間に空室だったり、大規模修繕が発生するでしょう。
そうしてペイできる時間がさらに伸びたとき、私の年齢はいったい何歳なのでしょうか。
まとめ
利回りの高さはリスクの高さと比例します。
そのため、単純に利回りが高ければ良いというわけではありませんが、実質利回り3.3%の物件では投資としてまったく成立しません。
月々のキャッシュフローが購入当初からマイナスとなってしまい、その手出しの回収がはじまることには私はもうこの世にいないでしょう。
もちろんその前に売却するという手も残されているわけですが、仲介手数料などの各種手数料、それから売却益課税、消費税と取られ、手残りはそこまで多くはないでしょう。
それならインデックス投資に毎月積み立てていた方がよっぽと利益になります。節税したいのなら、所得控除を得られるiDecoをやった方が良いでしょう。
不動産投資の本質は、月々のキャッシュフローにより収益を得つつ、時期を選んで売却することです。
それができない投資は失敗と言えるのでしょう。
しかしこのまま諦めてしまったら意味がありません。この状態からどうやって回収を図っていくのか、別の記事で改めて考えていきます。