「フラット35」金利が今月も引き上げ【変動金利は大丈夫?】

長期固定型の住宅ローンの「フラット35」について、住宅金融支援機構は、最長35年のローンの最も低い金利を2月から0.03ポイント引き上げ、3月は年1.35%にすると発表しました。

毎年1月から3月は不動産における繁忙期です。長らく低利で安定していたのに、このタイミングでの上昇で、肩を落とす方も多いようです。

この背景には、長期金利の急激な上昇にあると言いますが、住宅ローンの金利は今後どうなっていくのか、不動産投資ローンの影響は、その辺りのことを今回は考えていきます。

フラット35とは

まず、フラット35についての簡単なおさらいから始めます。

フラット35は、民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。35年間ずっと金利が固定されるというのがポイントで、将来どんなインフレ(モノの値段が上昇、お金の価値が下降)が起きても、関係ありません。

フラット35はどんな人が選ぶ?
  • 将来の金利上昇が怖いから
  • 変動金利で借りられない

変動金利の場合、金利が上昇したら、月々の返済額も増額されてしまいますが、固定金利であるフラット35であれば、どんなに情勢が変わろうとも月々の返済額は一定で安定した資金計画を立てることができます。

ローン審査も変動金利より通りやすく、比較的組みやすいローンと言えます。

固定金利なのに毎月金利が変動するってどいうこと?

フラット35は全期間固定金利。なのに、毎月金利の変動は起こります。これはどういうことでしょう。

固定金利が適用されるのは、一般的に物件引き渡し直前の金利です。それ以降は、固定され、どんなに金利が変動しようと関係ありません。
変動しているのは、「適用される金利」のことです。

例えば、年始にフラット35で借入することができれば、1.2%台だったのに、それがほんの2、3ヵ月で1.35%まで上がってしまっています。つまりこれは、年始の金利が適用された人は得をして、3月に適用された人は損したということです。
数字だけみれば大したことないように見えますが、借入額が非常に高額になるのが住宅ローンです。上がった分だけ、利息が増えて、元本にあてる充当額が減る。つまり、毎月の返済額は増えているのに、元金返済の割合が減ってしまい、それが積み重なって、最終的な総返済額に大きな差がでるということです。

「適用される金利」が物件購入の契約時でなく、物件引き渡し直前というのがポイントで、契約してから家が建つまでの数か月間で金利が上がるか下がるかはわからないので、その人のもつ運のようなものがでてきてしまう世界です。

フラット35金利と変動金利は金利決定のプロセスが違う

もう少し、予備知識のおさらいを続けます。3月になり、フラット35の金利が上がったことがちょっとしたニュースになりました。居住用、投資用、どちらのローンに限らず、心配の声が増えていますが、3月に上昇したのはあくまでフラット35の金利であり、変動金利については、ほとんど変わっていません。

これは、フラット35の金利と変動金利は金利決定のプロセスが異なるためです。

フラット35の金利日本国債の金利に連動する。
変動金利日銀の政策によって決まる。

フラット35の金利は日本国債の金利に連動する、つまり、市場における国債の取引によって決まります。
その理由は、フラット35で貸し出しているお金は金融市場を財源にしているからです。もちろん、国債以外の要素もありますが、国債は国で一番信用のある債権だからこそ、長期の金利となるフラット35金利と強い相関関係にあるわけです。特に、10年国債の金利との相関は強く、ほとんど同じ値動きをします。

一方、変動金利は、日本銀行が決定する政策金利によって決まります。つまり、日本銀行の金融政策によって決まるということであり、市場との直接的な関係はありません。

なぜ「フラット35」金利が上昇したのか?

「フラット35」金利の上昇は、最近の10年国債金利の上昇傾向を踏まえたものです。

金利は上昇もすれば、下降もするものではあるのですが、今回は「急上昇」となった点がポイントです。
以下は、10年国債利回りの6か月チャートです。

長らく低利で安定していたのに、2月に入ってから急激に上昇しているのがわかります。

この10年国債利回り上昇の背景には、アメリカで巨額の財政出動を伴う追加の経済対策や、新型コロナウイルスのワクチンの接種によって景気回復が進むという期待が市場で急速に高まっていることにあるようです。一般的に景気の回復期待が高まると、投資家は比較的安全な資産である国債などの債券を売って相対的にリスクの高い株式などに資金を振り向けるため、10年国債のような長期金利は上昇しやすくなります。

翌月のフラット35の金利が決定されるのは、月末の金利ではなく、前の月の半ばです。住宅購入における繁忙期ど真ん中での急上昇。今のチャートを見る限り、一旦調整が入り下がっていますが、押し目になり、さらに上がっていくようにも見えます。引き渡しが3月に間に合わなかった人は危険です。

変動金利への影響は?

ここまで前置きが長くなりましたが、我々、不動産投資家にとって、フラット35の金利はどうでもよく、気になるのは変動金利への影響だと思います。

前述のとおり、変動金利は、日本銀行が決定する政策金利によって決まります。政策金利は、一般の銀行に融資する際の金利であり、景気が良い場合には高く設定され、景気が悪い場合には低く設定されるのが通常です。
つまり、景気が良い場合にはローンの金利が上がってしまうということです。ただ、今のコロナ禍、金融政策により株価は上がってますが、実体経済の景気が良いとはとても思えません。さらに、国や日銀が進めるデフレ脱却はまだ到底実現できていません。そのため、ポジショントークになるかもしれませんが、変動金利はまだしばらくは上がらないのではないかと考えていきます。

実際、3月の金利について、変動金利は先月と変わっていませんでした。
以下は2021年3月の変動金利について、低い順にランキングしたものです。

  1. ジャパンネット銀行
        0.38%
  2. auじぶん銀行
        0.41%
  3. 住信SBIネット銀行
        0.44%

※セット割などによる金利引き下げを考慮しない

それにしても、ランキングを作っていて改めて気づいたのですが、居住用ローンの金利はものすごく低いですね。特にネット銀行の低さは圧倒的です。

投資用の変動金利の水準は2~3%程度。高い。