不動産投資ローンで注意すべき金利と実質年率の関係

不動産投資で利益を得るために重要となるのは銀行からの借入金利であるということは言うまでもありません。

2024年後期の不動産投資ローンの金利相場は平均で2.5%前後などと言われています。私も区分マンション1部屋分の借り入れがありますが、ほぼ平均の金利となっています。

さてこの金利ですが、「融資利率」と「実質年率」が存在します。そして、借り入れなどの際に銀行マンから大々的に説明を受けるのは「融資利率」であり、最後の方にちょろっと補足的に付け加えて説明されるのが「実質年率」です。

この2つの違いをおさえておかないと気づかないうちに大きく損をしてしまうことになります。そこで本記事では、融資利率と実質年率の違いについて考えていきます。

金利が1%違うと総支払額はどのくらい変わるのか

金利の重要性を考える上で、金利が1%違うとどのくらい総支払額が変わってくるのかをイメージできるようになっておく必要があります。

数万円、数十万円の借入金利であれば、1%がそこまで大きく影響するわけではありませんが、不動産という高額な借入金額となるとたったの「1%」がどんでもなく大きな差を生みます。

東京都内のワンルームマンション1部屋の購入価格はだいたい2,000万円~2,500万円です。

今回は以下2つの条件でローンを組んだ時のそれぞれの総支払額とその差を計算してみます。

Aパターン:元本2,000万円、金利1.8%、期間35年
Bパターン:元本2,000万円、金利2.8%、期間35年

総支払額は以下の計算式で算出できます。

総支払額=毎月の返済額×12×返済年数

毎月の返済額を算出する計算式はややこしくなるので割愛しますが、
Aパターンの毎月の返済額と総支払額は以下になります。

毎月の返済額:約 65,748円
総支払額:約 2,759万円

対して、金利が1%増えたBパターンの場合はどうなるのでしょうか。
結果は以下になります。

毎月の返済額:約 79,298円
総支払額:約 3,324万円

毎月の返済額の差は「13,550円」、総支払額はなんと「565万円」です。

金利に慣れていない方にとっては、たった1%の違いと思えるところですが、2,000万円という大金を35年という長期間借り入れるということで、その1%の差が565万円というとんでもなく大きな差を生み出すわけです。

融資利率と実質年率

融資利率とは、ローンを借り入れる際の元金に対する利息や利息の割合を指します。(「借入利率」や「金利」とも呼ばれます。)

投資のおいて単に「金利」というと、「年◯%」という年利(1年間に対して適用される金利の割合)のことを指します。(例えば、100万円を年利3%で借りた場合、1年間で支払う利息は3万円になります。)

実質年率とは

実質年率は、融資利率に加え、借り入れまたは投資に関連するすべての手数料やその他の費用を含めた実際のコストを表します。つまり、1年間で実際に支払う総コストの計算に用いるのが実質年率になるということです。

当然ですが、融資利率より実質年率の方が高くなります。

例えば、融資利率が2%で、関連手数料が含まれると実質年率が2.3%になるといった具合です。

実質年率を用いれば、自分が支払うべき利息を計算ではっきり出せます。

月々の利息 = 残債 × 実質年率 ÷ 12

例えば、月々の返済額が10万円で残債が2,000万円、実質年率のが2.3%であった場合、月ごとの返済は以下のようになります。

月返済額年率残債月返済利息月返済元本
100,0002.320,000,00038,33361,667
100,0002.319,938,33338,21561,785
100,0002.319,876,54838,09761,903
100,0002.319,814,64537,97862,022
100,0002.319,752,62337,85962,141

少しずつ、月々の返済利息が減り、返済元本が増えていくのがわかります。

金利という表現に注意する

金利は借りたお金に対して支払う追加の料金のことですが、その「金利」という表現は意外と曖昧です。

例えば、日利、月利、年利など、異なる期間で適用されることがあり、それらはどれも「金利」と呼びます。

ただ、不動産投資ローンにおいては、金利と言えば「年利」のことを指します。(金利は広い意味で使われる用語であり、年利はその中の一つの特定の形式です。)

年利は、1年間を通じて適用される金利の割合であり、「年率」や「年利率」とも呼ばれます。

そして、さらに、年率は「融資利率(借入利率)」と「実質年率」に分かれます。

銀行によっては一元的に実質年率のことを「金利」や「年率」と表すこともありますが、一方で「融資利率」と「実質年率」を明確に分けているところもあります。

後者の場合、最初の説明では「融資利率」で説明されて、最後にシレッと「実質年率」について説明されて、金利2%で融資が通ったと思っていても実際は2.3%だったなんてこともあります。

呼び方がたくさんあるところですが、それらを混合しないようにしないといけません。

まとめ

金利が1%上がるということの影響はものすごく大きいです。

そしてそれは0.1%でも無視できないほどの負担がのしかかってきます。

「融資利率(借入利率)」と「実質年率」があり、借入の際に重視すべきでは「実質年率」となります。

はじめから両者を分けることなく「実質年率」で説明してくれる銀行もありますが、そうでないところもあるため両者の違いについては十分に注意してください。