住宅ローンを組むなら、自身が加入している保険の見直しは必須です。不要な保険を止める、あるいは減額し、浮いた分をローンの繰り上げ返済にまわす。居住用のローンであれば、13年間は国から控除がでるため、そこまで無理する必要はありませんが、投資用ローンの場合は、早く返済することが望ましいと言えます。
そもそも住宅ローンを組んだら、団信にも加入することになるため、備えるべき「万が一」も変わってきます。
今回は、まず保険にはどのような種類があるのかを再確認し、投資用の住宅ローンを組んだ場合に加入した方が良い保険は何かについて考えていきます。
保険の種類
死亡保険
死亡または高度障害状態になると保険金が支払われる保険です。保障期間が限られている定期保険や保障期間が終身(死亡するまで)となる終身保険、保険金を分割して受け取れる収入保障保険が代表的です。それぞれ、どのような保険なのか細かく確認してきましょう。
定期保険
定期保険は、契約するときに決めた一定期間だけ保障が受けられる保険商品のことです。保険期間内に被保険者が死亡もしくは高度障害状態になた場合に保険金が支払われます。満期を迎えると保障がなくなります。そのため、保障期間の更新を考えることになりますが、これまでの同等の保障とすると毎月の保険料が高くなります(若い人程、割安になります)。
次に紹介する終身保険よりも毎月の保険料が大きく割安になります。掛け捨て型(支払った保険料は戻らない)になりますが、子供の学費がかかるタイミングなど、必要な期間だけ保障を手厚くできます。
終身保険
終身保険は、一生涯の死亡保障がある生命保険のことで、死亡または高度障害状態になった際に死亡保険金が支払われる保険です。保険料の一部が積み立てられるため、途中解約した場合は所定の解約返戻金を受け取れることができます。解約返戻金とは契約を解約したときに受け取れるお金のことです。つまり、貯蓄性も含んだ保険です。
万が一のときに遺された家族の生活費の保障、葬式費用などに備えるのに加え、将来の大きな支出に対する経済的な備えにもなります。
収入保障保険
収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害状態になったときに、家族が年金方式で毎月一定額の保険金を受け取れる掛け捨て型の保険です。この保険の最大の特徴は、総受け取り保険金額が将来に向かって減少していく点です。例えば、子供が2才ときに収入がなくなったら大学卒業する22才までの20年分の教育費、生活費が必要ですが、子供が12才であれば10年分でよくなります。この考え方で、年数の経過とともに必要な分だけの保険料を受け取れるようにするため、全体的な保険料が安く抑えられています。
加入しておいた方が良い死亡保険は?
死亡保険は遺族の経済的な困窮を回避するために加入するものです。そのため、独身の方は基本的に加入の必要はありません。保険屋は独身者にも生命保険を全力で進めてきて、自身が死亡した場合にかかる費用について説明し、保険受け取り人を親として加入させようとします。
親に多額の保険金を残しても意味がありません。葬式は質素に行い、費用は抑えれば良いだけのことです。
一方、幼い子供がいる場合は、死亡保険の加入は必須と考えます。子供がいるのに、残された家族に何も残さないのはあまりに無責任です。
ただ、団体信用生命保険によりローンが完済された状態の不動産を資産として残してあげることができるので、保険金を減らすことを考えても良いかと思います。物件の収支がよければ、物件のローン価格相当の死亡保障を得ることと同じになります。
定期保険はおすすめしません。大抵の場合、60才で満期となり、そこで終わってしまうことになりますが、今の時代、60才までに亡くなる確率は低いです。高確率で損する保険です。だからといって、終身保険にすると極端に割高になってしまいます。
そこでおすすめは収入保障保険です。定期、終身保険より割安で、保険金は年金形式で受け取れるため、遺族の生活資金として必要な分だけ残してあげることができます。
医療保険
病気やケガで入院した際に、入院給付金や手術給付金を受け取れる保険です。ガン治療に特化したものや、就業不能となった際の収入減に備えるための就業不能保険があります。
医療保険
病気やケガで入院、手術をすることになったとき、入院費や手術費用といった支出に備えるための保険です。
ガン保険
ガン保険はその名前のとおり、ガン(悪性新生物)を対象とした保険です。ガンの場合、高額治療になりやすく、再発リスク、入院期間の長期化など、通常の医療保険では十分な保障を受けられないケースが多いです。保障対象をガンに限定することで、手厚い保障を受けることができる保険です。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなったときに経済的な不安を払拭するための保険です。就業不能と判断された場合は、定期的(大抵の場合、月ごと)に給付金が支給されます。給付金は、就業不能状態から回復するまで、もしくは保険期間満了まで、毎月支払われます。
似たような保険として、前述の収入保障保険がありますが、両者の違いは、収入保障保険は遺された家族に残すための保険であり、就業不能保険は給料がなくなったときに自分自身が困らないようにするための保険です。
加入しておいた方が良い医療保険は?
入院や手術には高額な費用がかかりますが、国民健康保険の高額療養費制度を活用することにより、負担は大きく軽減されます。ただ気をつけないといけないのが長期入院となった場合です。収入が途絶えてしまうのに、費用は次々に重なるため、この備えは必要です。特にガンは2人に1人はかかると言われていて、治療が長期化するため備えておいた方が良いです。これは保険でなく、貯金しておくというのもひとつの方法でしょう。
おすすめは就業不能保険です。就業不能となった場合、当然ですが収入がなくなってしまうことになり、そうなってからでは打つ手がなくなるため、加入しておきたい保険です。
医療保険の場合、1回の入院で、保障期間は60日~120日となる保険が多いですが、就業不能保険は加入期間中であれば、ずっと支給されます。また、在宅療養でも保障が受けられるという点も大きいです。
ローン返済中の場合、家族や自分自身にとって最も困るのは、就業不能状態となったときです。当然ですが、まだ生きているので、団信も死亡保険も適用されません。なおかつ、働けない。そんな状況下でも、継続して返済していかないといけません。投資であれば、家賃収入があると思うかもしれません。しかし、いつ空室になって途切れるかわからないものを働けない状況で当にしてはいけません。そのような状況に備えておける就業不能保険の必要性は高いと言えるでしょう。
貯蓄型保険
万が一の事態に備えながら、老後の備えにもなるのが貯蓄型保険です。年金形式で保険金を受け取れる個人年金保険や、子供の学資を確保するための学資保険などがあります。
個人年金保険
個人年金保険は、契約時に決めた年齢まで(60歳など)保険料を払い込み、その後、一定期間(5年、10年)もしくは一生涯にわたって年金が受け取れる貯蓄型の保険です。公的年金では足りないので上乗せしてもらえるように準備しておく、または、公的年金の受け取り開始は65歳なので、60歳で退職後のつなぎとする目的の保険です。
国民年金、厚生年金の受け取り開始年齢が引き上げられたり、減額されるのではないかという不安から、老後資金の足しにと加入するケースがほとんどだそうです。
学資保険
学資保険は、子供の学費を貯めるための貯金です。契約時に定めた保険料を払い込むことで、子供が一定の年齢になったときに「祝い金」「満期金」という名目でまとまった額の給付金を受け取ることができます。多額の教育費を毎月コツコツ積み立てて、進学などに備えます。
加入しておいた方が良い貯蓄型保険は?
現状、日本は超がつくほどの低金利です。その中では貯蓄型保険はあまりおすすめできません。確かに銀行に預けておくよりは、金利は高くなりますが、そこまで大きく変わりません。また、受け取り開始は定年後となり、それまでは基本的に引き出すことはできません。そのため、その分をローン返済にまわした方が良いでしょう。
老後2,000万円問題など背景に、将来に備えないと不安だという方は、iDecoやNISAを活用した方が良いでしょう。それらの方が税制面で圧倒的に有利です。ただ、既に加入している場合は、早いタイミングで解約すると元本割れしてしまいます。ローンの繰り上げ返済は大抵、50万円ぐらいからなので、無理に解約する必要もありません。その場合は減額を考えても良いかと思います。
個人賠償責任保険
日常生活の中で、他人をケガさせたり、モノを壊したりして賠償が発生した際の賠償金や弁護士費用を補填してくれる保険です。
自動車保険や火災保険の特約としてつけることができます。特に子供がいる場合は加入しておいて損はない保険です。よその子をケガさせたり、モノを壊したりするなど、子供の日常生活には様々なリスクが潜んでいます。突然、とんでもない請求をされるかもしれませんので、これも備えておいた方が良いでしょう。
保険の見直しポイント
今の世の中、不安だらけです。災害、少子化、雇用、老後資金などなど、それらが起きたときに困らないよう十分な備えをしようと考えるわけですが、過剰な備えになっていませんか。もしそうであるならば、それは結局、保険屋が儲かっているだけで、自身は損していることになります。
保険を見直しすることで、保険料を節約し、いざというときにすぐに使える貯金を増やした方が賢明なのは言うまでもありませんね。
保険の見直しを保険屋に相談すると、さまざまな不安を煽って、また不要な保険に加入させられるかもしれません。当然それは仕事でやってるわけで、向こうからすると利益を上げないといけないので、保険屋が悪いと言っているわけではありません。
言いたいのは、その保険が本当に必要なのか、払いすぎていないかは、やはり自身で見定めるしかないということです。
扶養する家族がいないのであれば、死亡保険は不要ですし、家族がいる場合も過度な保険金は必要なく、公的保障で十分な場合もあります。自分に適切な保険範囲を決めるために公的保障のカバー範囲を把握しておくことも重要です。
団体信用生命保険(団信)は死亡保険の代わりになります。自身の資産運用としてのマンション投資でもありますが、見方を変えると、遺された家族を守るための保険資産にもなると言えるわけです。実際、掛け捨ての定期保険を解約して、団信で代用する方が多いです。
居住用、投資用に限らずローンを組む際は、保険の過不足をなくし、貯金とローン返済に当てられないか十分に検討してみましょう。
家族がいる場合でも、月に2.5万円以内に抑えるのがひとつの目安です。