不動産投資ローンの金利はどう決まる?【金利上昇で焦る前に仕組みを知って備える】

日本銀行は、7月18日と19日に開催された金融政策決定会合において、政策金利の追加利上げを全会一致で決定しました。

この利上げは短期プライムレートに連動しており、住宅ローンの変動金利にも直接的な影響を及ぼすため、連日メディアでも大きく取り上げられています。「住宅ローン破綻」といった言葉も、すでに飛び交い始めています。

さらに、この動きは直接的ではないにせよ、長期プライムレートにも影響を及ぼすことは間違いありません。

不動産投資ローンは、一般的にこの長期プライムレートに連動しているため、私が組んでいるローンの金利も、近い将来上昇する可能性が高いと考えています。

借入当初の金利は「2.00%」でしたが、2025年7月には「3.35%」へと、実に「1.35ポイント」もの上昇となりました。2026年1月には「3.30%」とわずかに下がるものの、2026年7月には再び「3.35%」を超えてくるのはほぼ間違いないでしょう。

ここまで一気に上げられてしまうと、借入当初は金利を低くして、借入の敷居を下げ、後から金利を引き上げて儲けようと考えているのではないかと疑ってしまうところです。

金利の上昇は、返済負担を驚くほど大きくし、まさに借入先の金融機関に生殺与奪の権を握られているような状況とも言えるでしょう。

だからこそ、半年ごとに見直される不動産投資ローンの金利が、どのように決まっているのかを正しく理解しておくことが重要です。

本記事では、不動産投資ローンの変動金利がどのように決まるのか、その仕組みについて詳しく解説していきます。

不動産投資ローンの金利の決まり方

不動産投資ローンの金利の決まり方は、借入先の金融機関によって異なることがあります。

その点が大前提となりますが、多くの金融機関では以下のように決まります。

適用金利 = 基準金利 + 上乗せ金利(スプレッド)

基準金利

基準金利とは、その名のとおり、銀行が設定する基本となる金利のことです。

何を基準とするかはローンの種類によって異なりますが、一般的に、住宅ローンでは「短期プライムレート」、不動産投資ローンでは「長期プライムレート」が用いられることが多くなっています。

この「プライムレート」とは、銀行が信用力の高い優良企業に対して貸し出す際の、最も低い金利のことです。つまり、返済リスクが低いと判断された企業に対して、銀行が「これ以上は下げられない」とする最低水準の金利です。

さらに、短期プライムレートは1年未満の短期融資に適用される金利であり、長期プライムレートは1年以上の長期融資に適用される金利となっています。

上乗せ金利

上乗せ金利とは、銀行がリスクや利益を見込んで基準金利に加える部分のことです。

たとえば、AさんとBさんが同じ金融機関から借入をしたとして、金利に差が出るのはこの上乗せ金利の部分です。

この上乗せ金利は、借り手の状況によって大きく変動します。具体的には、以下のような要素が影響します。

・借りる人の信用力(年収・職業・勤続年数・借入状況など)
・投資物件の立地や収益性
・自己資金の割合
・ローンの返済期間

たとえば、大手企業に長年勤めていて安定した収入がある人であれば、金融機関にとって返済リスクが低いため、上乗せ金利は低く設定されやすくなります。

一方で、収入が不安定だったり、勤続年数が短かったりする場合は、返済リスクが高いと判断され、上乗せ金利が高くなるのが一般的です。

適用金利

適用金利とは、前述のとおり「基準金利 + 上乗せ金利」で構成されており、実際に支払う利息を決定する重要な指標です。

たとえば、ある金融機関で、

基準金利:1.0%
上乗せ金利:1.5%

という条件であれば、適用金利は「2.5%」となります。

これが、不動産投資ローンにおける基本的な金利の決まり方です。

ただし、金融機関やローンの種類によっては、「基準金利 + 上乗せ金利」から、さらに優遇幅(引き下げ幅)を差し引いた金利を適用するケースもあります。そのため、表示されている金利がどのように算出されているのかを確認することが大切です。

金銭消費貸借契約証書にすべて書いてある

金融機関やローンの種類によっては、前述の「適用金利 = 基準金利 + 上乗せ金利」という式がそのまま当てはまらない場合もあります。

そのため、不動産投資ローンを組む際には、金融機関から提示される「金銭消費貸借契約証書」をしっかりと確認することが重要です。

この契約書は、ローン契約時にサインする書類のひとつですが、適用金利の決定方法が必ず明記されています。

私の場合、契約書には以下のように記載されていました

長期プライムレート + 1.00%

つまり、「1.00%」が私に対して設定された上乗せ金利ということになります。そして、この契約時に決まった上乗せ金利はローンの返済期間中ずっと変わらないのが一般的です。(ただし、借り手側の信用状況が大きく変化した場合など例外もあります。)

不動産投資ローンを活用していくうえでは、この上乗せ金利が高いのか低いのかを適切に判断する力がとても重要です。

なぜなら、完済まで変わらない部分だからこそ、「たった0.1%の差」でも、長期的には返済総額に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。

「1.00%」という上乗せ金利は、当時としては高めの水準でした。私はそのとき、金利の妥当性を判断できず、担当者の説明を鵜呑みにしてそのままサインしてしまいました。

今振り返ると、この金利条件であれば、他の金融機関にも審査を依頼したり、金利の引き下げ交渉を行ったり、それが難しければ契約を見送る判断も必要だったと感じています。

ちなみに、このローンは3戸目の区分マンションを購入したときに組んだものですが、1、2戸目では、別の金融機関から借りており、そこでの上乗せ金利は「0.9%」でした。

3戸目のローンを組んだ際、特に転職したとかはなく、むしろ年収は上がっていたときでしたが、金融機関が違うからなのか、借入総額が膨らんでいたからなのか、0.1ポイント上げられてしまっています。

35年の長期ローンともなると、このたった0.1ポイントの差が投資の成否に致命的な影響を及ぼすというのは言うまでもありません。

見直し後の適用金利は早い段階で予想できる

変動金利の場合、通常は半年ごとに適用金利の見直しが行われます。 6月と12月には返済予定表が郵送され、その中に7月および翌年1月からの適用金利が記載されています。これにより、翌月以降の金利が初めて明らかになるという仕組みです。

しかし、実はそれよりも早い段階で次回の適用金利を予測することが可能です。

多くの金融機関では、毎年「4月1日」と「10月1日」時点の長期プライムレートに上乗せ金利を加えた利率を、次の適用金利として採用しています。

長期プライムレートは各金融機関から毎月発表されているため、「4月1日」「10月1日」時点のレートは、それぞれ前月(3月・9月)に発表されたものが該当します。

つまり、3月中には7月からの適用金利が、9月中には翌年1月からの適用金利が把握できるということになります。

この4ヵ月弱の差は非常に大きいです。

まとめ

本記事では、不動産投資ローンの金利がどのように決まるのかについて考えてきました。

その答えは、ローン契約時に交わす「金銭消費貸借契約証書」に明記されており、借入時点で金利の仕組みはすでに決まっているという点にあります。

記事の冒頭で触れたような、「借入当初は低金利で誘い、後から金利を引き上げて利益を得る」といったことは、基本的にはできない仕組みになっています。

つまり、金利の決定方法も含めて、すべて借り手と金融機関の合意のもとで契約が成立しているため、後になって「金利上昇は不当だ」と主張しても、それが認められることはほとんどありません。

不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、中でも「金利リスク」は非常に大きな影響を及ぼす要素です。

これまで順調に利益を上げてきたベテランの投資家や不動産の専門家であっても、金利リスクへの対応を誤れば、破綻に追い込まれる可能性も十分にあります。

日本では長らく低金利が続いていたため、金利リスクに対する意識が薄れがちですが、今後の金利動向には十分な注意が必要です。